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当団体の設立理由

2016年3月、任意団体「コンゴの性暴力と紛争を考える会」(Association on Sexual Violence and Conflict in the DR Congo: ASVCC)が設立された。その活動目的とは、コンゴ民主共和国(以下、コンゴ)の性暴力と紛争鉱物、そしてグローバル経済の関係性に初めて焦点を当てたドキュメンタリー映画『女を修理する男』(原題:The Men who Mends Women)を全国の大学やNGOなどにおける上映を通して、その問題に関する認識を広め、性暴力の防止策について考えることにあった。本作品には、コンゴ人の婦人科医、人権活動家、かつノーベル平和賞受賞候補者のデニ・ムクウェゲ(Denis Mukwege)医師の活動が中心に取り上げられている。

 

ASVCCが本活動に取り組んだ動機は3点ある。第一に、コンゴ紛争が勃発してから2016年で20年が経つため、この機にコンゴの紛争について振り返る機会をつくりたかったことである。1994年に起きた隣国ルワンダのジェノサイドを知っている日本人は多数いるが、それに対して、それがコンゴに飛び火してコンゴ大戦が勃発したことを理解している人は大変少数である。

第二に、ムクウェゲ医師の活動を通して、紛争長期化の要因である紛争鉱物問題を取り上げ、性暴力とグローバル経済との関係性に関する認識を広めたいと思ったからである。性暴力と紛争をテーマとする映画は過去に数本上映されたものの、性暴力と紛争鉱物の関係性を取り上げ、かつムクウェゲ医師の活動を描いたドキュメンタリー映画は本作品が初めてである。そのため、性暴力と紛争鉱物の問題に関する認知度が高くない日本において、本映画を上映する意義は十分にあると判断した。

第三に、「先進国」が「途上国」を助けないといけないという一般的な先入観を排除したかったことである。日本にいる我々にできることは、必ずしも資金援助や技術提供だけではない。ムクウェゲ医師のような優秀で正義感がある方の活動の重要性を理解した上で、性暴力や資源の不法な搾取といった人権侵害に対して声をあげたりその真実の追究もできるであろう。

ASVCCは、本作品上映会の短期的効果として、性暴力と紛争鉱物の関係性に関する議論の促進と意識の向上、また中長期的効果に関しては、上映に加えて、紛争下の性暴力の防止策を探るために、ASVCCの学生メンバーが紛争鉱物とグローバル経済の関係について研究を進めることを挙げていた。その上、過去にコンゴの紛争資源などの研究や調査に従事したNGOや企業などを招いて公開勉強会を開催し政策提言を行うことにより、この問題に関する社会的認識を高めることを期待していた。

そもそも私が本問題に関心を寄せ始めたのは、過去に国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)職員として、コンゴ東部のゴマという紛争の中心地で勤務していた際に、性暴力のサバイバーと出会ったことがきっかけである。その後UNHCRを退職し、コンゴとルワンダにおける紛争と平和、人権問題や難民について本格的に研究し始めた。その過程で、ムクウェゲ医師の演説や活動をフォローし、同氏の学術論文を読み、事態の深刻さをより理解すると同時に、日本でも本問題に関する認知度を向上したいと痛感するようになった。

コンゴの性暴力と紛争を考える会 代表 米川正子

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